スイスチャードの歴史と女王リウィア

スイスチャードは、かなり古くから食用にされてきた野菜です。記録や考古学的な証拠をたどると、おおよそ次のような歴史があります。


1. 起源

  • 原産地は地中海沿岸(イタリア・ギリシャ周辺)とされ、紀元前4世紀頃にはすでに栽培されていたと考えられています。
  • 学名 Beta vulgaris subsp. vulgaris はビート(テンサイやビーツ)と同じ仲間で、葉と茎を食べる系統がスイスチャードにあたります。

2. 古代の食利用

  • 古代ギリシャ・ローマ時代には「ベータ(Beta)」と呼ばれ、薬草や食用野菜として普及。
  • ローマ時代の農業書『デ・レ・ルスティカ』や『ゲオポニカ』にも記載があり、煮物やスープに使われていたようです。
  • 当時は特に消化促進・整腸作用があると信じられていました。

3. 中世ヨーロッパ

  • 中世には修道院や農家の菜園で盛んに栽培され、スープやパイの具材として日常的に食べられました。
  • 葉物野菜が乏しい冬場にも収穫できるため、栄養補給源として重要でした。

4. 近代以降

  • 18~19世紀にかけて品種改良が進み、茎が赤や黄などカラフルな「レインボーチャード」系統も登場。
  • 日本には明治時代以降にヨーロッパ経由で伝わりましたが、長らくほとんど普及せず、近年の健康志向やカラフル野菜ブームで再注目されています。

つまり、スイスチャードは少なくとも2300年以上前から人類が食べている野菜で、歴史的にはかなりの古参メンバーです。
しかもローマ時代にはもう「薬効のある葉野菜」としての地位を確立していました。


リウィア女王が食べていたかもしれない?!

かなり可能性は高いと思われます。

ローマ皇帝アウグストゥスの妻であった**女王リウィア・ドルシッラ(紀元前58年〜西暦29年)**は、健康と長寿の象徴のような人物で、80歳を超えても生き生きとしていたことで有名です。

当時の状況から推測すると…


1. スイスチャードはすでにローマの食卓にあった

  • 紀元前4世紀には地中海沿岸で栽培されており、リウィアが生きた紀元前1世紀〜1世紀初頭のローマでは**「ベータ(Beta)」**として普及。
  • ローマの農業書『デ・アグリ・クルトゥーラ』や『デ・レ・ルスティカ』には葉ビート類の記述があり、煮たり炒めたりして食べられていました。

2. リウィアは健康食志向だった

  • 歴史記録によると、彼女はとても慎重に食事管理をしており、野菜・ハーブ・果物中心の食生活を好んでいたと伝えられます。
  • 特に消化によい葉野菜や薬草を多く摂取していたとされ、スイスチャードもその対象に十分入りえます。

3. 当時の薬効認識と一致

  • ローマではスイスチャードは消化促進・便通改善・血液浄化の効能があるとされていました。
  • リウィアが長寿と健康維持を目的に食事を選んでいたことを考えると、薬草的な位置づけのスイスチャードはぴったり。

結論

史料に「リウィアがスイスチャードを食べた」という直接的な記述は見つかっていませんが、

  • 彼女の生きた時代に既に栽培・普及していた
  • 健康志向の食生活に合う野菜だった
    この2点から、食べていた可能性はかなり高いと推測できます。

では、「女王リウィアが食べていたかもしれないローマ時代風スイスチャード料理」を、当時の食文化やレシピ記録(Apicius など)を参考に再現してみます。
甘み・酸味・香草を組み合わせるのが古代ローマの特徴です。


リウィア風スイスチャードの温かいハーブ煮

(古代ローマ料理再現)

材料(2〜3人分)

  • スイスチャード … 200g(葉と茎)
  • オリーブオイル(エクストラバージン) … 大さじ2
  • 白ワインビネガー … 大さじ1
  • 蜂蜜 … 小さじ1〜2(お好みで調整)
  • クミンパウダー … 小さじ1/2(古代ローマで好まれたスパイス)
  • コリアンダーシード(粉) … 小さじ1/4
  • フレッシュディル または フェンネルの葉 … 小さじ2(刻む)
  • 松の実 … 大さじ1(軽く炒る)
  • 海塩 … 適量
  • 黒胡椒(粗挽き) … 少々

作り方

  1. スイスチャードを下ごしらえ
    • 茎と葉を分け、茎は1cm幅、葉はざく切りにする。
  2. 茎から炒める
    • 鍋にオリーブオイルを入れ、弱火で温める。
    • スイスチャードの茎を入れて軽く炒め、柔らかくなるまで3〜4分加熱。
  3. 葉と香辛料を加える
    • 葉を加えてしんなりするまで炒める。
    • クミン・コリアンダーを入れ、香りを立たせる。
  4. 甘酸っぱい味付け
    • 白ワインビネガーと蜂蜜を加え、全体を混ぜながら1〜2分煮る。
    • 塩・黒胡椒で味を整える。
  5. 仕上げ
    • 火を止め、刻んだディル(またはフェンネルの葉)と松の実を散らす。

食べ方のポイント

  • 古代ローマではパンと一緒に皿に盛り、煮汁をパンで吸わせて食べていました。
  • 甘味(蜂蜜)+酸味(ビネガー)+香草+スパイスという組み合わせは、ローマ料理らしい独特な風味です。
  • 当時は砂糖がなかったので、甘味はすべて蜂蜜由来です。
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